ビジネスの場でよく語られる「利他の精神」
言葉としては耳にする機会も多いですが、
その本質は意外と誤解されがちです。
利他とは、単に「人に尽くすこと」では
ありません。
もっと現実的に言えば、「自分に関わる人が
先にうまくいくことを考える姿勢」です。
たとえば、取引先との関係を考えてみます。
自社の利益ばかりを優先して条件を
押し付ければ、短期的には得をするかも
しれません。しかし、相手に余裕がなければ、
その関係は長く続きません。やがて距離が
でき、「あの会社とはもう関わりたくない」
と思われてしまう。
一方で、相手がしっかり利益を出せるよう
配慮した提案をする。
「この条件なら御社にもメリットがあります
よね」と、相手の立場に立って考える。
すると、相手は安心してこちらと向き合い、
結果として関係は継続しやすくなります。
つまり、利他は遠回りのようでいて、実は
最も現実的な戦略でもあるのです。
ただし、ここで一つ大事な問いが出てきます。
「では、自己犠牲を払ってまで相手に
尽くすべきなのか?」
結論から言えば、それは長続きしません。
例えば、常に自分の利益を削ってでも相手に
合わせ続ける人がいたとします。最初は
「いい人だ」と評価されるかもしれません。
しかし、次第に無理が重なり、心に余裕が
なくなっていく。やがて小さな不満が積み
重なり、ある日突然関係が崩れてしまう。
あるいは、疲弊した状態で無理に相手に
尽くそうとすると、どこかに無理が出ます。
言葉に棘が混じったり、態度がぎこち
なくなったりする。そうなると、せっかくの
利他の行為も、相手にとって心地よいもの
ではなくなってしまいます。
ここに、見落とされがちな順番があります。
まず、自分を尊重すること。
その上で、他人に及ぼすこと。
自分の状態が整っていないのに、誰かを
支え続けることは難しい。
これはビジネスに限らず、人間関係全般に
言えることです。
たとえば、日々の業務に追われて余裕が
ないとき、普段ならできる気遣いが
できなくなることがあります。
逆に、少し余裕があるときは、自然と
周囲にも目が向き、結果として良い関係が
築ける。
利他の精神とは、無理をして与え続けること
ではなく、持続できる形で価値を循環させる
ことです。
そのためには、まず自分が健全であること。
無理なく動ける状態であること。
そこから初めて、相手にとって意味のある
関わりができる。
「己を尊び、人に及ぼす」
この順番を守ることで、利他は単なる理想論
ではなく、現実の中で機能する考え方に
なります。
ビジネスは結局、人と人との関係で
成り立っています。
だからこそ、自分を整え、その上で相手を
思う。
その積み重ねが、無理のないかたちで
信頼を生み、長く続く関係へとつながって
いくのだと思います!!

