ある企業・組織の話です。
新設された部署に、社内でも一目置かれる
カリスマ性ある人物がリーダーとして
就任しました。彼は実績も人望もあり、
まさに「適任」だと誰もが思っていました。
彼の言葉には説得力があり、決断も早い。
メンバーたちはそのリーダーシップに安心し、
最初は組織全体が力強く前進しているように
見えました。
ところが、半年後に問題が表面化します。
外部との連携ミス、部門内の衝突・確執、
顧客離れ…。誰が見ても方針に無理が
あったのですが、誰もそれを本人に
伝えなかったのです。
なぜか?
リーダーが威圧的だったわけではありません。
ただ「この人は間違わない」と周囲が信じ
切っていた。そして何より、意見を挟む
「余地」そのものが、無意識のうちに
奪われていたのです。
この話は決して珍しいことではありません。
権限を持つ立場になると、人は自然と
「自分の信頼できる人」で周りを固めたく
なります。心理的安全性が高くなり、
効率も良くなる。けれど、その快適さは時に
「ぬるま湯」となり、批判や反対意見が
消えていきます。
組織において最も怖いのは、「誰も間違いを
指摘しなくなる」ことです。
特に、カリスマ性のあるリーダーが陥り
やすい落とし穴。周囲が沈黙するのではなく、
リーダー自身が聞く耳を持たなくなって
しまうのです。
リーダーに必要なのは、「問いかける力」です。
自分自身に、そして周囲に、問い続けること。
「私の言動は独善的ではないか?」
「異なる意見がちゃんと上がってきているか?」
「自分は、ハダカの王様になっていないか?」
現代の優れたリーダーは、強さと同時に
“脆さ”も受け入れる覚悟を持っています。
完璧ではない自分を認め、他者の声に耳を傾ける。
その姿こそが、組織に本当の信頼と強さを
もたらします。
思い返してみてください。
あなたの周囲は、あなたに本音を言えているで
しょうか?
それとも、あなたの王冠の光で、真実が
見えなくなってはいませんか?